La Vie en rose4 「すみませんでした」 とりあえずバーナビを中に入れてソファに座らせ、飲み物でもだそうとキッチンに行きかけたところを引き止められて、頭をさげられた。慌てて顔をあげさせようとしてもバーナビーは下を向いたままで、立っている虎徹からは表情も見えない。 けれど沈痛な空気は伝わって、バーナビーにそんな思いをさせているという事実に、もともとの原因は彼の方にあるのだということも忘れて虎徹はおたおたと動揺する。 「僕は誤解をしていて…あなたにひどいことを」 「誤解…誤解ってかさ…あの、うん───謝ることねーよ。別に無理やりされた…わけじゃないんだし」 「でもいやがってましたよね」 虎徹がごにょごにょと言うと、バーナビーはおそるおそる、というように顔をあげた。すがるように必死な顔で見上げられて、少なくとも嫌われたくないと思われている事実にほっとする。だからそれを言うのは少し恥ずかしかったし、自分の気持ちを知られるようで心が痛かったが、小さな声で続けた。 「本気で嫌なら殴り飛ばしてるって」 「いやじゃなかった…ってことですか?」 「えっ…あー……」 バーナビーが身を乗り出すようにしてさらに尋ねてくるのに、虎徹は目を逸らして後ずさった。その拍子に、床に転がっていたなにかを踏んでしまう。 「うわっ…!」 「虎徹さん!」 踏んだそれが足の下でごろりと転がって、虎徹は思い切りバランスを崩した。後ろに向かってすっころびそうになった彼を、バーナビーがあわてて手を伸ばしてソファの方に引き寄せてくれる。 「ご…ごめ……」 ソファに座ったバーナビーに乗りかかるような形になって、慌てて起き上がろうとしたが、彼の手が腕をつかんだままでそれを果たせない。不思議に思って顔をあげると、バーナビーは虎徹をつかまえたままじっと床を凝視していた。 「────なんですかこれ」 「えっ、うわあああああっ!」 バーナビーの視線の先を追って床をみた瞬間、虎徹は叫びながらそれに手を伸ばした。それより先に、バーナビーの方がさっと彼の腕を離してそれを手に取ってしまう。 「…………これ」 「っ!!」 手にしたそれをしげしげと見られて、虎徹はもう声も出せない。 それは、バーナビーが来たのに慌ててソファの下につっこんだ、『勉強道具』のひとつだった。ピンク色のグロテスクな形のそれが、ソファの下から転がってきたらしいことに気づいたバーナビーは、眉を寄せてそこから他のものも引きずり出してくる。見つかったのと同じサイズのバイブや最初に使っていたやや細身のバイブ、それからローションとコンドームの箱に、買ったものの使っていないローターやアナルパール…… ひとまとめにカゴにいれてあるそれは、独り身の中年男の部屋から出てくるには異様なものだった。バーナビーと会っていない間、人を呼ぶことなどないからとソファの下に置きっぱなしにしていたのがあだになった。どちらにせよ、さっきまで使っていたものは見つかったかも知れないが。 「これ、なんですか。どういうことですか。あなたこんなもの…誰かに買ってもらったんですか?使われた?」 「ち…違う!これは俺が自分で買って───」 ソファの上で再び腕をつかまれ、ものすごい剣幕でつめよられて、虎徹は思わずそう言ってしまう。また誤解されたらたまらないと思ったからだが、口にしてからそっちのほうがよほど恥ずかしいという事実に気がついた。いい年をしたおっさんが自分でそんな物を買って使っていたなんて、聞く方も気持ちが悪いだろう。 そう思ったのだが、バーナビーは目を見開いて虎徹を凝視していて、引いているというよりはただただ驚いているように見えた。あまりにも自分の常識外のことだったからだろうか?彼は自分を落ち着かせるかのように眼鏡の位置を直し、低い声で言った。 「自分で…?だってその───あなたのアソコ、すごく狭かったですよね」 なにかを思い返すような顔をしてバーナビーが問うてくるのに、虎徹はかあっと赤くなった。腕をつかまれているから完全にそっぽを向いてしまうことは出来なくて、精いっぱい顔を反らしながら、真っ赤な顔で告げる。 「だ…だから…おまえのが入らなかったから、入るようにしようと思って」 「え………」 虎徹の言葉に、バーナビーは完全に硬直してしまった。やっぱり引かれた!と思ってごまかすための言い訳を必死に考えるが、実際に道具がある以上うまいごまかしも思いつかない。虎徹があわあわしている間に、バーナビーはなぜかまた二回、眼鏡の位置を直した。そしてためらうような声で尋ねてくる。 「僕と───またしてくれる気がある…んですか?」 「おまえにまだその気があんなら……」 してくれる、という言い方とその声におもねるような響きを感じ取って、虎徹は上目遣いにバーナビーを見ておそるおそるそう言ってみた。するとガシッと両腕をつかまれ、興奮した声で叫ばれる。 「したい…したいです!してもいいんですか本当ですか?」 「え…う、うん?」 前の時のやや冷たい態度や、普段のスタイリッシュな様とはまるで違う、子犬がじゃれつくような勢いですがりつかれて、そんなにしたかったのかと面食らう。そりゃあヒーローになってからはそうしたこととは縁遠くなっていたのだろうし、それだけたまってるならこんなおっさんでも抱いてみようと思うのかも知れない。 さきほどまでの沈痛な面持ちはどこにいったのか、ぱあっと明るい笑みを浮かべて、バーナビーは虎徹に抱きついてくる。 「一週間、準備してくれてたんですね。僕のために───本当に?嬉しいです、虎徹さん!」 「そりゃ…え、お?あれ?」 戸惑っているといつの間にかソファに押し倒されていて、虎徹はぎょっとする。視線をあげれば、天井のライトの光をさえぎるように、ハンサムな顔が真上から自分を見下ろしていた。 「虎徹さん、僕は────」 「ちょっと待て、待てってバニー!」 バーナビーの顔が近づいてきて、さらにいうと胸元にそえられた手が微妙な動きをしていて、虎徹は慌てた。女慣れはしているようだったから無意識かも知れないが、へんに気づかわれて面倒なことをさせるのは本意ではない。これはあくまでもバーナビーの欲求解消のための行為だ。ちゃんとそう思わなければ、虎徹の方がつらい。 そう思ってバーナビーを止めると、彼は虎徹を見下ろして少し苦しげな顔をした。 「やっぱりいやですか」 「いやじゃねえけど…その、さ……前ちょっと失敗しただろ?」 欲求不満から来る憂い顔でもハンサムは様になるな、と見当違いなところで感心しながら、虎徹はバーナビーの肩を押して起き上がった。体を引いてくれた彼の顔をのぞき込んで、小首をかしげながら提案する。 「だから今日は俺にやらせてくれないか?」 「あ…そ、そうですね。僕また興奮して…あなたを傷つけるところでした」 虎徹の顔を見て数瞬動きを止めたバーナビーは、ハッとして目をしばたたかせると、表情をやわらかくして言葉を続けた。 「もう二度とあなたにひどいこと、しませんから。あなたのいやがることはしたくない……虎徹さんがしたいようにしてくれて、いいですから」 「あ、うん?」 虎徹がしようとしていることはバーナビーを気持ちよくさせるためにすることで、つまりバーナビーのいいようにすることのはずだけれど、なんだか違うことになっているような気がする。だけどまあ、結果的にバーナビーの欲求が発散できればいいか、と虎徹はひとりで納得した。 そして自分にやらせてくれ、と言ったものの、ここからどうしたら…と考えて、虎徹は練習した通りにフェラチオをすればいいのだ、と思いつく。そうだ、あれだったら自分でもバーナビーを気持ちよくしてやれるだろう。 そう思って体を入れ替え、バーナビーをソファに押し倒そうとしたけれど、長身のバーナビーの体はソファに収まり切っていなくて、練習していた時のような体勢はとれなかった。虎徹は首をかしげてしばし考えると、おもむろにソファから降りてバーナビーの足もとにしゃがみこむ。この方がむしろ、バーナビーから自分の姿が見えなくていいかもしれない。 「虎徹さん!?」 床に座り込んで彼の脚の間に入り込むような体勢をとった虎徹に、バーナビーがぎょっとしたように声をあげる。拒まれる前に、と思って、虎徹は彼のベルトに手を伸ばして緩め、カーゴパンツのファスナーを降ろした。 「こてつさん…」 「わ……」 布をかきわけて取り出したバーナビーのものは、練習時に使っていたバイブと違って、当たり前だが体温があって少し青臭い匂いがする。手にしたその質量に思わず声が漏れた。さすがに勃ちあがっていない今はバイブよりは小さくて、口に含むのにもそれほど苦労しなくてすみそうだ。 「ん……」 自分のものとは違い、ピンク色で愛らしく見えるそれに虎徹は躊躇なくくちびるを寄せた。脳裏に『勉強』のために見た映像を思い出し、舌を突き出してまずくるくると先端を舐める。「っ……!」 片手を置いていたバーナビーのふとももが緊張して、びくりとわずかに跳ねる。感じているのだ、と思って嬉しくなった。のばした舌でそのままつうっと下までなぞり、陰嚢を軽くくちびるで吸って、またゆっくりと先端まで戻る。女優はその時ずっと上目遣いに男を見ていたけれど、おっさんの顔など見せられても萎えるだろうから、顔はあげない方がいいだろう。 虎徹はうつむいたままバーナビーのものに舌を這わせ、それがひくひくと反応しはじめると、ぱくりと口をあけてそれを呑み込んだ。 「こてつさ……」 ちゅうっと口をすぼめながら半ばまで呑み込むと、口の中のものとバーナビーの膝がびくびくとふるえる。いままでだって、こんなことくらい女の子にしてもらったことはいくらだってあるだろうに、自分相手でも反応してくれるのが嬉しい。もしかしたら口でされるのが好きなのかも知れない、と思うと、『勉強』したかいがあったというものだ。 口の中の熱が愛しくなって、虎徹は無理をしてできるだけ奥までそれを呑み込んだ。先端を刺激するように喉の奥にごりごりと押し付け、セックスの動きのようにはいかないが、何度も浅く出し入れする。どんどん膨らんでくるそれに息ができなくなって一度引き抜くと、今度はさきっぽだけふくんで、開ききった笠をなぞるように舌を這わせた。 「ん…ふはっ……ばに、ちょっとは気持ちいいか?」 「いい…ですけど、あなた、こんなことどこで……」 「動画見て…べんきょ、した…」 バーナビーの声に疑いの響きを感じて、恥ずかしい事実を伝える。こんなおっさんがバイブまで買って、自分の尻をいじっていたことまで言ってしまったのだ。もう恥ずかしいことなどない、と思ったけれど、やはり少し恥ずかしかった。 思わず様子を窺うのにバーナビーを見上げると、上を向いているだろうと思った彼は、なぜか虎徹の顔を凝視していた。 「……僕のために?」 「見んな」 バーナビーがじっとこちらを見て、低い声で言うのにぎょっとした。ずっと見られていたのかも知れない、という事実に慌てて、虎徹はローションをこぼした時のために持ってきていたタオルを手に取ると、バーナビーの顔にばさりとかけた。 「え、ちょっと…」 バーナビーはそれに驚いてすぐタオルを取ろうとしたけれど、必死にのばした手で虎徹がそれを阻む。 「見るなって」 練習はしたけれど、たぶん実際にいままでしたことのない虎徹はそううまくはないだろう。女の子にされているならそれでも興奮するかも知れないが、虎徹の姿が見えていたら、しているのがおっさんだと我にかえった瞬間に萎えるかも知れない。虎徹はしょせん代用品なのだ。できるだけ気分的にも気持ちよくなって欲しくて、虎徹はバーナビーの目をふさいだ。 「頼むから」 そう懇願すると、バーナビーは戸惑いながらもタオルを取ろうとする手をおろした。虎徹はほっとしてまた彼の足もとにしゃがみこみ、すでに完全に勃ちあがったものをゆるゆると手で刺激しながら問い掛けた。 「な…バニー、どっちがいい?」 「っ……なにが、ですか」 舌先で先端をぐりぐりと舐めると、バーナビーは息をつまらせながら問い返してきた。陰嚢がぐっと持ち上がって、彼が衝動をこらえているのがわかる。手の中のものがひくひくとふるえるのが、生き物のようでなんだかかわいい。 このままいかせて気持ちよくしてやりたかったが、念のためバーナビーの要望を聞くことにした。 「このまま口に出すのと、えっと…い、いれんのと」 「入れたいです」 口でイきたい、と言うかと思ったバーナビーは、虎徹の予想を覆してそう言った。はあ、と熱っぽい息をつきながら虎徹の髪に手をのばして、甘い声でささやく。 「許されるなら、あなたの中に入りたい」 「そ…そっか」 その言い方にセックス以上の意味を見いだしそうになって、虎徹は赤面しながら小さく首を振った。バーナビーの甘い声は凶器だ。まるでくどかれてでもいるような気持ちになってしまう。これは単なるバーナビーの欲求解消のための行為で、虎徹の立場はある意味道具でしかないというのに。 「じゃ、ちょっと待ってな」 虎徹はバーナビーにそう告げると、先ほど彼がソファの下から引きずり出したローションとコンドームを手に取った。それから、彼の視界が遮られているのをいいことに、バーナビーの前で無造作に下肢の衣服を脱ぎさる。 「さっきまで拡げてたから、入ると思うけど……」 「えっ、こてつさんっ…!?」 虎徹が下半身裸でソファに乗り上がり、バーナビーの膝をまたぐと、ソファが沈んだことでなにが起こっているのか察したのか、彼はうわずった声をあげて自分の目をふさいでいるタオルに手を伸ばした。 「こ、これ、まだとってはいけませんか?」 「なに言ってんだ。だめだって!」 虎徹はいまバーナビーのすぐ目の前にいるのだ。体の感覚だけなら多少ごまかせるかも知れないが、おっさんの顔を間近に見ながらのセックスなんて萎えるに決まっている。 虎徹はバーナビーがタオルを取ろうとするのを止めると、彼のものにくるくるとゴムをつけた。そしてこぼさないように気をつけながらローションを手にとり、ゴムの上からバーナビーのものを濡らす。 「虎徹さん、あのっ……」 「まだ、ちょっと待て。もうちょっと……」 待ちきれないのか、何ごとかを言おうとするバーナビーの言葉を遮り、虎徹は自分の後ろに手を回すと、つい先刻まで自分でバイブを突き入れていた場所をローションで濡らした。さきほどもローションを使っていたからある程度中まで濡れているはずだが、女性と違って濡れてくることのないそこを使うには、ベタベタにしていて丁度いいくらいだろう。何度かローションを足して、垂れてくるくらいびしょびしょにする。 「ごめん。待たせたな、バニー」 奥まで指を突っ込んでぬるぬるに濡らしてから、虎徹は腰を上げて屹立するバーナビーのものを跨いだ。片手で後孔に導くと、それがびくびくと脈打っているのがわかった。コンドームに包まれたそれは、虎徹が使っていたバイブよりもう少し大きいかも知れない。入るだろうか、と思いながら、虎徹はそれを自分の中に迎え入れた。 「虎徹さん…こてつさん?あの、これ……うわっ…あ!」 「ふあ───あっ…!」 入口に先端を押し付けてゆるゆると腰をゆすりながら落としていくと、くぷり、とカリの部分までがあっさりと入り込む。前にバーナビーにされた時のような痛みはなかったが、その感覚はバイブレーターともまた違った。体温以上に熱いはずもないのに、それは入り込んだところから中を灼いていくように感じるほど、熱を持っているように思えた。 「ああっ…!ん────」 バイブ以上に感じる圧迫感をこらえながらぐっ、ぐっ、と押し込んでいくと思わず声が漏れる。そんな気持ちの悪い声を聞かせたくなくて慌てて口を塞ぐと、バーナビーの手が虎徹の腰をつかんだ。なだめるように腰のラインをなぞられ、下から軽く突き上げられて、「ひんっ…」とありえない声をあげてしまう。その上、体内のバーナビーのものはまた大きくなって、どこまで入れられたのかさえよくわからなくなった。 「ばに、さわんなって…!」 「そんなこと言われても…見えないんですから、これくらいいいでしょう?」 ふれられたら女でないことがわかってしまう、と思ってバーナビーの手を引きはがそうとしたけれど、腰だけならそう変わらないか、と思い直す。バーナビーの手はただ虎徹の体を支えるだけで、強引に引き寄せるようなことはなかった。虎徹は小さく腰をゆすりながら、少しずつ彼の熱を自分の体内に呑み込んでいく。 (バニーの……) バーナビーの欲望が自分の体内にある。顔が見えていないせいもあるのだろうけれど、虎徹の体でも萎えずにびくびくとふるえている。その熱さがたまらなくて、虎徹は必死に声をこらえながら最後までその熱を呑み込んだ。 「ん────」 自分の尻がバーナビーの膝に当るのを感じて、虎徹はようやく彼のものを全部呑み込んだことを理解する。バイブをどうにか呑み込めるようになっていたそこは、バーナビーのものでぎちぎちになっていたが、ひどい痛みはなかった。それよりも充足感がすごい。バイブとはまるで違う。みっちりと、虎徹の中を埋め尽くすようにそれは熱く脈打っている。 「痛い…ですか?」 視界をタオルに阻まれた状態のまま、バーナビーが虎徹を気づかうように尋ねてくれる。そんな風に気づかってくれなくていいのに、もっと道具みたいに扱ってくれていいのに、とそう思いながら虎徹は黙って首を振った。それでは見えていない彼にはわからないと思ったが、気配で察したのか、そうですか、とバーナビーはほっとしたように小さく笑った。 (バニー) 名前を呼びたいのを我慢して、バーナビーの肩にしがみつく。あまり接触すべきではないと思ったけれど、こうしないとバランスが取れないから。うまく動けなくて、気持ちよくしてやれないから。そう思って虎徹は、ぎゅっとバーナビーの肩につかまって腰を揺らしはじめた。 バーナビーはそんな虎徹の腰と背中を抱いて、ゆるゆると下から突き上げてくる。それはやや遠慮がちで激しいものではなかったが、快楽を求めるその動きがたまらなかった。はあはあとバーナビーの吐息が耳元をかすめるのにぞくぞくする。彼の熱を受け入れた場所は軋んでわずかに痛みを訴えたけれど、それ以上に彼の欲望を受け止めている喜びの方が強かった。 「虎徹さん…虎徹さん。これ、もう取っていいですか?」 「だめ…だめだ。っ……あ!」 「じゃあ、キス…キスしていいですか?」 「あ、ま……んっ」 虎徹の返事を待たず、バーナビーは手探りで虎徹の顔にふれると、腰を揺らしながらキスをしてきた。セックスしながらキスするなんて、本当の恋人同士の行為のようだと思いながらも、バーナビーとのキスは気持ちよかった。もしかしたら彼の方も気持ちよさを感じているのだろうか。口腔は性感帯のひとつだ。バーナビーはキスしながらするのが好きなのかも知れない。 「ん……ふ────あふ……」 髭の感触で我に返ったりしないだろうか、と思いながら、虎徹はバーナビーとのキスに溺れた。ちゅくちゅくと唾液が混じりあう音と共に、下肢からもローションがかき混ぜられる音が響く。キスしながらでは激しく動くことはできなかったけれど、小刻みな動きが早くなって、バーナビーの絶頂が近いことを知らせた。 「こてつさん……きもちい…嬉しいです。こてつさん…!」 「あ……んっ、いっ……あ────!」 「こてつ…さん!」 「っ────!」 くちびるを離した途端、腰をつかんで大きく突き上げられて、虎徹は口もとを押さえることもできずに押し殺した声をあげた。そして、絶頂を示してびくびくとふるえるバーナビーのものを体内に感じながら、しぼりとるように腰をゆらめかせたのだ。 next back |